半纏·法被は古くから祭や職人の仕事着として使用され、誇りを表現する正装として、また、着用された方々の一体感を生み出してきました。そんな半纏·法被は現在でも同様に祭や職人の仕事着として使用される他、ホテル、旅館、飲食店などでもおもてなしの心を伝える正装としても使用されています。
お店に入り、スタッフの方々が半纏·法被を使用されているところを想像してみてください。日常とは違った雰囲気を演出し、統一感が生まれ、お客様に特別な時間を提供する一助になるはずです。
一方で、その半纏·法被のデザイン、生地や色味が安っぽいものであれば逆効果になってしまうことも。
ではインパクトを持たせながら正装としての風格を持った半纏·法被とはどのようなものでしょうか。
今回は、おもてなしの心と一体感を表現した京都の居酒屋「こうじえん」様のスタッフの皆さんが着用される半纏·法被について紹介させて頂きます。
1.背中で見せる誇りとインパクト
背中で語ると言う言葉があるように、背中から伝わるメッセージというのは人の心に知らず知らず入っていくものです。今回、背中にはお店のロゴを表現。目立たせながらも全体のバランスを考慮した大きさにし、職人が丁寧に染色することで、綺麗で味のあるものになり、お店の印象を強く残すものになっています。
2.大事なことをおさえる
今回のデザインに関するご要望の中で、「違い鷹の羽」の紋を入れたいとリクエストを頂きました。鷹は美しく勇敢で人と感情を交わすことのできる唯一の猛禽類ということもあり、古来から武家の紋としても使用されており、鷹の羽は日本十大紋の一つとなっています。
「違い鷹の羽」をデザインに入れる場合、通常は背中に入れることになります。しかし今回は背中には店のロゴが入るためここには入れることができませんでした。
そうすると、考えられる部分としては襟になりますが、元来、親方が弟子に暖簾分けする際、半纏·法被に親方の紋を入れて贈るという習わしがあり、その際に親方の紋を入れる場所が襟になります。そのため、襟に「違い鷹の羽」を入れると意味合いが変わってしまいます。現代においてはそのことを知る人は少ないので気にし過ぎる必要はありませんが、本物を作る上ではこういった正しい知識を持って提案させて頂くことを大切にしていきたいと考えています。
3.腰柄に紋を入れる発想でインパクトを
こうした中で、「違い鷹の羽」の紋を襟に入れるのではなく、腰の部分に腰柄として入れる提案をさせて頂きました。インパクトを持たせながら洗練された印象を維持するために必要なぎりぎりのサイズにてデザインし、ご要望に応えることが出来ました。
こうして本物の風格を持った半纏·法被は、店の看板を背負いお客様におもてなしの心と洗練された印象を与えるとともに、お店全体に一体感と活気をもたらすことが出来るものと考えています。これからもお客様のご要望や期待にお応えする半纏·法被づくりに励んでまいります。