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楽屋暖簾を製作する際に抑えておきたいポイント|加藤健旗店ブログ

投稿日:2019年3月3日 更新日:

「楽屋暖簾を贈って喜んでもらいたいけど、作るのが初めてで何から検討して良いかわからない!」 そんなお悩みをお持ちではないでしょうか?

贔屓にしている役者さんやタレントさん、応援している個人や団体に贈る楽屋暖簾。思いのこもった上質な楽屋暖簾は、役者さんやタレントさんにとってはファンの方々から応援されている証でもあり、ひとつのステータスとして、大変喜ばれる贈り物です。元来は歌舞伎役者の方に贈られるものでしたが、現在では様々な役者さんやアイドル、アーティストの方にも公演ごとに贈られるほど文化として浸透している贈りものです。
・どうせプレゼントするなら誇らしいものを贈りたい! 
・デザインや生地を自分で考える上で必要な情報が欲しい!
・限られた予算の中で最高のものを作りたい!
このようなお気持ちの方のために、ここでは、喜んで頂ける楽屋暖簾をプレゼントするために抑えておきたいポイントを項目ごとに解説させて頂きます。

まず何から決めるべきか

楽屋暖簾を製作する際に考えなければならない要素には主に以下のものがあります。
・サイズ
・デザイン
・生地
・染色方法
・仕立ての種類(棒通しの形等)
・防炎加工の有無

初めて楽屋暖簾を製作される場合、何から決めていけばいいかわからないこともあると思います。
そんな時に最も大切なことは、1番こだわりたい部分を優先的に考えるということです。
例えば「どうしてもこの絵を使いたい」というものがあれば、デザインから考えて、そのデザインを表現するのに適した生地と染色方法を選定、そして暖簾のサイズに合わせて業者でデザインを調整して製作に入るという流れになるでしょう。
また、元来、楽屋暖簾は生地によって役者さんの格を表現しており、一流の役者さんには正絹ちりめんという生地を使用した楽屋暖簾を贈られていました。その伝統は今はそれほど意識する必要はありませんが、「正絹ちりめんにこだわりたい」といった場合は、その前提でデザインやサイズを決めていく必要があります。お考えになられているデザインがイメージしている生地に使えるのかどうかは、一度業者に相談されることをおすすめします。
それでは各項目についてポイントを見ていきましょう!

楽屋暖簾のサイズは?


楽屋暖簾の一般的なサイズは横幅が100cm~108cm、長さが160cm程度で3巾(3つに割れている形)が一般的です。大きいものでは横幅135cm、長さ170cm の場合もあります。
小さいものでは、横幅85cm ~90cm、長さ150cmで2巾(2つに割れている形)のものもあります。
特定の舞台公演や会場が決まっている場合にはその場所に合わせたサイズにする必要がありますので、事前に会場や、関係者に確認されることをおすすめします。
使用される場所が決まっているわけではないプレゼントの場合は、ご希望やご予算に合わせて決められれば問題ありません。また、生地が正絹の場合、生地の幅が狭く、大きいサイズには対応できない場合があります。上記の一般的なサイズであれば問題ないのでご安心ください。綿やポリエステルであればサイズに合わせて裁断し、縁を縫製するのでどのサイズでも問題ありません。
詳しくはお仕立ての項目でも説明致します。

 

デザインやレイアウトに決まりはあるの?

元来は中央に紋やイラストを描き、右側に「〇〇〇〇さん江」、左側に「贈り主様のお名前や団体名」もしくは「贔屓より」といったレイアウトで製作されることが一般的です。

桂 花團治さんへ贈られた楽屋暖簾

また、祝儀の際の贈り物の意味で右上に「のし」の文字を書き入れることも一般的に行われてきており、レイアウトによっては左側に贈りたい方のお名前を入れる場合もありますので、名前を右側か左側のどちらに入れるかはデザイン等によって自由に選択して問題ありません。

右上に「のし」の文字を、左側に贈られる方のお名前をレイアウトした楽屋暖簾

生地の選び方

生地を選ぶ際に考慮する点は、上述したような「サイズ」と、「どのようなデザインにしたいか」、あとは「ご予算」になります。
フルカラーや多色を使用する場合、正絹では難しくなります。色数が多く複雑なデザインになるほど高額になるため、ポリエステルの生地に昇華転写捺染という染色方法を用いることが多くなります。
ただし、この方法ですと暖簾の独特の風合いという点では劣るため、フルカラーが必要といった目的や複数色を使いつつ予算を抑えたいといった場合以外には正絹や綿がおすすめになります。
生地の詳細は、 「楽屋暖簾の生地の種類について」の記事で紹介していますので併せて参考にしてみてください。

染色方法について

楽屋暖簾の染色方法は上述の生地とデザインと併せて検討する必要があります。
生地が綿の場合は基本的には引き染め、正絹の場合は引き染めや、着物のように友禅染めを行う場合もあります。ぼかしてグラデーションを表現することも可能です。

友禅染めの楽屋暖簾


フルカラーなど色数が多く複雑なデザインの場合にはポリエステルの生地に昇華転写捺染になります。

お仕立ての種類

楽屋暖簾も通常の暖簾と同様に、棒通し部分の仕立て方について、「袋縫い」と「チチ」のいずれかを選択します。
どちらでも問題ないため好みで決められるのがいいですが「袋縫い」は関西風仕立て、「チチ」は関東風仕立てと呼ばれているので地域を参考に決められるのも1つの方法です。また、「チチ」の方が縫製工程が増えるため、数千円高くなります。

袋縫のお仕立て

チチのお仕立て

また、生地の耳をそのまま使用するか、裁断して三つ折りにするかも、検討要素のひとつです。
基本的には必要なサイズに合わせて裁断し、その部分を三つ折りに縫製しますが、正絹で元々の生地幅が狭いものでは、生地の幅をいっぱいに使って、三つ折りに縫製せずに生地の耳をそのまま使用することが多いです。

三つ折りに仕立てられた端部

三つ折りにせず、生地の耳を利用した楽屋暖簾

防炎加工は必要?

使用される会場によっては防炎加工が必須というところもありますので、場所が決まっている場合は事前にお電話等で確認しておくと確実です。防炎加工が必要な場合も業者に依頼すれば問題なく対応可能です。

喜ばれる楽屋暖簾

以上が楽屋暖簾製作時のポイントになりますが、参考になりましたでしょうか?贈り物を製作される際の一助となれば幸いです。
主にはデザイン、生地、ご予算の兼ね合いが悩みどころだと思いますが、「こんな感じのものを贈りたい」というイメージさえあれば、あとは相談して決められますので、あまり悩まれずに信頼できる業者に相談されれば業者の方から説明や提案をしてもらえます。
もし業者探しで悩んでおられるなら、当ブログを運営する京都の老舗『加藤健旗店』までお問い合わせください。イメージやご予算に合わせた最適な提案をさせて頂きます。

 

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